If/天野昇が存在しなかった場合の世界、戯曲αの眼はこれで存在を否定される
2005年11月5日 思想 架空学園エルド・ガッシュ、そこは有るとされ、そこは無いとされ、世界の外れに存在した。
誰にも理由は分からないが、魔術と言うモノは世間から隔絶された場所に存在しなければならないらしい。
誰も履歴書に技能・魔術なんて書けるわけじゃないのに、通うモノは皆勤勉で(多少例外も居るが)禁欲的で(実際のところ腹黒いヤツが多い)糞真面目な集団だった(はっちゃけたヤツも居るけどね)。
エルド・ガッシュと言う魔術の最高学府は一つにして、他にもあるらしい、意味は分からないが、確かに存在するらしい。
ま、俺には関係ないけどね。
序章 暇人、魔術師、一六歳
………めんどくさい
何の因果か、俺は今、チョークを片手に、空いてる方で教科書を見ながら召喚陣を書いている。
本当は知ってなければならない公式やら何やらはめんどうなんで、そんまんま写すに限る。
別に試験があるわけじゃないし、まぁ、だらけてても卒業出来るわけで、それに俺はこれと言って魔術師になりたいわけじゃない。
じゃあ何でこんな陰気臭いところで変な文字書いてるかって?んなもん俺が知るか。
何時の間にか、俺は中学を卒業すると同時にここに入学させられたんだ。
本当は公立のぼちぼちな学校に行く予定だったのに、クソ親父が勝手にそれを破棄して、ここへとぶち込んだ。
母さんは笑って助けてくれないし、ていうかあの顔はむしろ楽しんでいたな。
陣を写し終えると次は変な触媒を並べる、こう言う有機物は臭いモノが多いから、精神を何処かに飛ばすに限る。
ま、あんまし眼が虚ろになると教官にバレるから、ある程度しっかりやらないと。
適当に過ごしてて、一度親に連絡が行き、親父がすっ飛んで来てぶち殺されそうになった前例があるからな。
はっきり言って、魔術の勉強はだるい、出来るならやりたくない、でも、これはこれでだる過ぎる。
「えーと、何々、トカゲの尻尾、三ダースに、犬の目玉、五個に、このキノコを磨り潰し………」
トカゲの尻尾を三ダースって、かなりの量じゃないか、気持ち悪いな、その次に使う目玉も十分アレだが。
魔術って何でこんな変な物体を使って行うんだ?必要性の説明を求める。
俺は普通に学校に通って、普通に青春を謳歌したいってのに、こんな地下の一室に篭って、薬の道具みたいなのいじってるんだ?
俺の運命分岐がここまで変なモノを選ばされた要因は親父以外の何ものでも無い、これは確か。
ていうか、何で親父は魔術師じゃないのに、ここの存在を知っていたんだろうか、しかも何故に俺を魔術師にしようとするわけ。
教官の方を見ると、無表情、嫌だねこの雰囲気。試験は無いってのに、この緊張感、何か間違ってない?
試験なら試験と言えよ、失敗したらどうせ面倒なことになるんだろ!
うし、セットアップは完了、最後は血を垂らして、何かが現れたら成功と。
「何処の世界、統べる魔皇、創世の祭器、第十七と最古の十一、最後の書物に巣食う闇の守護者、法をも紡ぐ、汝、史上唯一の王道」
と、まぁ、別に呪文の詠唱なんて必要は無いんだけど、こう言うのってやっぱり、雰囲気じゃない?
そもそも、詠唱と言っても、召喚陣って言う巨大な式でなりたってるわけで、適当に思いついた文字列が干渉することはありえないしな。
黄金の光が、滝のように流れ込んだ。教官が何かを叫ぶ、エラーが起こったか!?
弾ける音、それは凄まじい振動となり、身を蝕む、召喚陣の暴走、それは死に直結する災害。
召喚とは別の場所より、何かを取り寄せる魔術、複雑な公式の集合体であり、その陣は失われた魔術の復元によって近年復活した。
遥かの昔、召喚陣と固定されたゲートであったと言う。他の世界とこの世界を繋ぐ道。
だが、それの暴走が起こればあちらに転送された陣と、こちらの陣が対消滅を起こし、強烈な爆弾と化す。
メテオ・ストライクとまでは行かないものの、人一人を吹き飛ばすには事足りる。
俺の十六年の人生もここで、終りなのか?それは、赦されるわけがない。
「第三階層世界に私を定着化させることが出来る魔術師が居ようとはな」
男の声、いや、それは王の声、魔術師の声、人の領域を飛び越えて行ってしまったモノの声。
「汝、契約す。私はアルセイン=ナリュセルト」
わけの分からないまま、召喚陣の上に立った男は、俺の額に手を置いた。
肉を鉄板の上に置いた時の音がし、一瞬、鋭い痛みが走った。これは、契約の儀式、教科書に載っていたアレか。
「ま、まさか………か、加賀大和が召喚した存在と言うのはっっ!!」
震える教官の声、それは恐怖であり、畏敬、彼のモノは名乗った名に対する………。
俺が適当に唱えた言葉は、最終戦争の魔道書の一節であったらしい、いや、例えそうであったとしても、通常は召喚出来るはずがない。
アルセイン=ナリュセルトと言う存在は人間、しかも、別世界の存在でありながら、こちらにも伝承が残る歴史的英雄、このモノより魔皇は始まったとされる程の存在。
「災難だったな、初代魔皇、俺は何も求めちゃいない、いや、求めていたとしても、魔術によって解決出来る事柄じゃない」
俺の言葉を聴いて思案するような顔をするアルセイン、そして、声を上げて笑った。
意味が分からない、何故、存在を否定され、笑えるのか、しかも、下級存在によって用件もなく召喚されたと言うのに。
「気に入ったぞ、召喚主、私が意味の無いことで駆り立てられるのはこれが初めてだ。私を呼ぶのは全てに意味があった。問おう、召喚主、貴君の名を」
名を聞くとは、契約紋を完全になりたたせると言う最終工程、これによって儀式は完成する。
ていうか、俺は別に使役したいわけじゃないんだが、コイツが居ることによって世界が激変するような気がした。
「我が名は加賀大和、空母と戦艦の名を持つモノだ」
「大和、威風堂々とした良い名だ。刻もう、我が心の一片に、汝も刻め、我が名を」
忘れようものか、魔術師の中で神格化した存在、その名を忘れた魔術師がどこにおろう。
「は、ははは、ま、まさか、成績最下位の加賀大和が、ま、魔皇を召喚するとは、世も末だ」
半分、忘れかけていた哀れな教官は放心状態で何かを口走っていた。
◆
「で、アンタ、どうするわけ?」
似非金髪で長髪、しかもうらめしや長身のニヒルな悪友は、黒髪、黒眼の男を見上げ、器用に俺に向かって言った。
「どうするもこうするも無いだろう、源蔵」
「おいこら、俺の名前は源蔵なんて厳つい名前じゃなくて、フリードだと言ってるだろう」
「っけ、良く言うぜ、生粋の日本人のくせして」
「大和よ、私にも紹介してくれないか?」
そうれもそうだ。コイツとは長い付き合いだし、アルセインとも関わってくるだろうしな。
「んーと、コイツは藤堂源蔵、自称フリード、まぁ、オツムは最悪だが、顔は悪くないから、将来、ていうか既にひも男としての地位を獲得している」
「ちょっと待て!!その紹介にはいささか問題がある。俺はひもではなく、愛をばら撒くキューピット様だ。勘違いをするな」
どっちも似たようなもんじゃないか、何がキューピットだと、どっちかと言うと悪魔だな。
「ふむ、遊び過ぎには注意せよ、私も後悔したことが一回や、二回どころじゃないからな」
………、この真面目って感じの魔皇さんも遊び人だった、と告白してんのか?この姿、容じゃ、源蔵どころのスケコマシじゃないだろう、一国の王、もとい、三国の王であったんだよな、と言うことは後宮を三個は持っていたということではないか、むむ、赦すまじき。
「エロエロじゃないか、ハー…
誰にも理由は分からないが、魔術と言うモノは世間から隔絶された場所に存在しなければならないらしい。
誰も履歴書に技能・魔術なんて書けるわけじゃないのに、通うモノは皆勤勉で(多少例外も居るが)禁欲的で(実際のところ腹黒いヤツが多い)糞真面目な集団だった(はっちゃけたヤツも居るけどね)。
エルド・ガッシュと言う魔術の最高学府は一つにして、他にもあるらしい、意味は分からないが、確かに存在するらしい。
ま、俺には関係ないけどね。
序章 暇人、魔術師、一六歳
………めんどくさい
何の因果か、俺は今、チョークを片手に、空いてる方で教科書を見ながら召喚陣を書いている。
本当は知ってなければならない公式やら何やらはめんどうなんで、そんまんま写すに限る。
別に試験があるわけじゃないし、まぁ、だらけてても卒業出来るわけで、それに俺はこれと言って魔術師になりたいわけじゃない。
じゃあ何でこんな陰気臭いところで変な文字書いてるかって?んなもん俺が知るか。
何時の間にか、俺は中学を卒業すると同時にここに入学させられたんだ。
本当は公立のぼちぼちな学校に行く予定だったのに、クソ親父が勝手にそれを破棄して、ここへとぶち込んだ。
母さんは笑って助けてくれないし、ていうかあの顔はむしろ楽しんでいたな。
陣を写し終えると次は変な触媒を並べる、こう言う有機物は臭いモノが多いから、精神を何処かに飛ばすに限る。
ま、あんまし眼が虚ろになると教官にバレるから、ある程度しっかりやらないと。
適当に過ごしてて、一度親に連絡が行き、親父がすっ飛んで来てぶち殺されそうになった前例があるからな。
はっきり言って、魔術の勉強はだるい、出来るならやりたくない、でも、これはこれでだる過ぎる。
「えーと、何々、トカゲの尻尾、三ダースに、犬の目玉、五個に、このキノコを磨り潰し………」
トカゲの尻尾を三ダースって、かなりの量じゃないか、気持ち悪いな、その次に使う目玉も十分アレだが。
魔術って何でこんな変な物体を使って行うんだ?必要性の説明を求める。
俺は普通に学校に通って、普通に青春を謳歌したいってのに、こんな地下の一室に篭って、薬の道具みたいなのいじってるんだ?
俺の運命分岐がここまで変なモノを選ばされた要因は親父以外の何ものでも無い、これは確か。
ていうか、何で親父は魔術師じゃないのに、ここの存在を知っていたんだろうか、しかも何故に俺を魔術師にしようとするわけ。
教官の方を見ると、無表情、嫌だねこの雰囲気。試験は無いってのに、この緊張感、何か間違ってない?
試験なら試験と言えよ、失敗したらどうせ面倒なことになるんだろ!
うし、セットアップは完了、最後は血を垂らして、何かが現れたら成功と。
「何処の世界、統べる魔皇、創世の祭器、第十七と最古の十一、最後の書物に巣食う闇の守護者、法をも紡ぐ、汝、史上唯一の王道」
と、まぁ、別に呪文の詠唱なんて必要は無いんだけど、こう言うのってやっぱり、雰囲気じゃない?
そもそも、詠唱と言っても、召喚陣って言う巨大な式でなりたってるわけで、適当に思いついた文字列が干渉することはありえないしな。
黄金の光が、滝のように流れ込んだ。教官が何かを叫ぶ、エラーが起こったか!?
弾ける音、それは凄まじい振動となり、身を蝕む、召喚陣の暴走、それは死に直結する災害。
召喚とは別の場所より、何かを取り寄せる魔術、複雑な公式の集合体であり、その陣は失われた魔術の復元によって近年復活した。
遥かの昔、召喚陣と固定されたゲートであったと言う。他の世界とこの世界を繋ぐ道。
だが、それの暴走が起こればあちらに転送された陣と、こちらの陣が対消滅を起こし、強烈な爆弾と化す。
メテオ・ストライクとまでは行かないものの、人一人を吹き飛ばすには事足りる。
俺の十六年の人生もここで、終りなのか?それは、赦されるわけがない。
「第三階層世界に私を定着化させることが出来る魔術師が居ようとはな」
男の声、いや、それは王の声、魔術師の声、人の領域を飛び越えて行ってしまったモノの声。
「汝、契約す。私はアルセイン=ナリュセルト」
わけの分からないまま、召喚陣の上に立った男は、俺の額に手を置いた。
肉を鉄板の上に置いた時の音がし、一瞬、鋭い痛みが走った。これは、契約の儀式、教科書に載っていたアレか。
「ま、まさか………か、加賀大和が召喚した存在と言うのはっっ!!」
震える教官の声、それは恐怖であり、畏敬、彼のモノは名乗った名に対する………。
俺が適当に唱えた言葉は、最終戦争の魔道書の一節であったらしい、いや、例えそうであったとしても、通常は召喚出来るはずがない。
アルセイン=ナリュセルトと言う存在は人間、しかも、別世界の存在でありながら、こちらにも伝承が残る歴史的英雄、このモノより魔皇は始まったとされる程の存在。
「災難だったな、初代魔皇、俺は何も求めちゃいない、いや、求めていたとしても、魔術によって解決出来る事柄じゃない」
俺の言葉を聴いて思案するような顔をするアルセイン、そして、声を上げて笑った。
意味が分からない、何故、存在を否定され、笑えるのか、しかも、下級存在によって用件もなく召喚されたと言うのに。
「気に入ったぞ、召喚主、私が意味の無いことで駆り立てられるのはこれが初めてだ。私を呼ぶのは全てに意味があった。問おう、召喚主、貴君の名を」
名を聞くとは、契約紋を完全になりたたせると言う最終工程、これによって儀式は完成する。
ていうか、俺は別に使役したいわけじゃないんだが、コイツが居ることによって世界が激変するような気がした。
「我が名は加賀大和、空母と戦艦の名を持つモノだ」
「大和、威風堂々とした良い名だ。刻もう、我が心の一片に、汝も刻め、我が名を」
忘れようものか、魔術師の中で神格化した存在、その名を忘れた魔術師がどこにおろう。
「は、ははは、ま、まさか、成績最下位の加賀大和が、ま、魔皇を召喚するとは、世も末だ」
半分、忘れかけていた哀れな教官は放心状態で何かを口走っていた。
◆
「で、アンタ、どうするわけ?」
似非金髪で長髪、しかもうらめしや長身のニヒルな悪友は、黒髪、黒眼の男を見上げ、器用に俺に向かって言った。
「どうするもこうするも無いだろう、源蔵」
「おいこら、俺の名前は源蔵なんて厳つい名前じゃなくて、フリードだと言ってるだろう」
「っけ、良く言うぜ、生粋の日本人のくせして」
「大和よ、私にも紹介してくれないか?」
そうれもそうだ。コイツとは長い付き合いだし、アルセインとも関わってくるだろうしな。
「んーと、コイツは藤堂源蔵、自称フリード、まぁ、オツムは最悪だが、顔は悪くないから、将来、ていうか既にひも男としての地位を獲得している」
「ちょっと待て!!その紹介にはいささか問題がある。俺はひもではなく、愛をばら撒くキューピット様だ。勘違いをするな」
どっちも似たようなもんじゃないか、何がキューピットだと、どっちかと言うと悪魔だな。
「ふむ、遊び過ぎには注意せよ、私も後悔したことが一回や、二回どころじゃないからな」
………、この真面目って感じの魔皇さんも遊び人だった、と告白してんのか?この姿、容じゃ、源蔵どころのスケコマシじゃないだろう、一国の王、もとい、三国の王であったんだよな、と言うことは後宮を三個は持っていたということではないか、むむ、赦すまじき。
「エロエロじゃないか、ハー…
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