三人の子供とヤツ

月夜に木霊する暴走霊の雄叫び、それは凶暴な眼差しで人を硬直させ、韋駄天の如く素早い脚で駆ける。
そして、朱い朱い水の刃、血を吸う度に鋭く不気味輝き研ぎ澄まされ、そして斬り刻む。
ウンディーヌ、水の精霊とされ、美しい容貌をしている筈の彼女は何らかの原因で異常召喚され具現化し村人を虐殺する。
異界にその姿を置く精霊族に人間が放つ微々たる“魔”では決定的な打撃を与える事は出来ない。
出来たとしても気休めな足止め程度であり、彼女の移動速度を気持ち抑え込んだ。
風を切る音がし、魔術師達は斬り倒されていき、女と年寄りは子を逃がし、男は彼女を遮るバリケードとなる。
穏かな田舎の村には異質としか言えない死臭が鼻を劈き、辺りに汚物が撒き散らされている。
滴る新鮮な血が顔に散り、半狂乱となっているモノ、逃げ道を求め、躍起となっている内に首を刈られるモノ。
老若男女差別無く、平等に殺戮に行う彼女はヒステリックな赤褐色の眼、凶悪な思考が彼女を動かせる。
哂えない程に最凶、強過ぎて誰も歯が立たず、その命を散らせて、血を盛って代価召喚を行う糧となる。
代価召喚、この村に発生した三人の血統を残す為に行われる究極の召喚陣形成による異界より神に値する概念の化物を呼寄せる禁忌。
三人の子供は村人が屠られる中、奇跡的に生き残っていた、いや、生き残っているのではない、生き残らされているのだ。
これは偶然では無く、必然であり、一人の男が三人の子供を手に入れるべく彼女を思考改造し強制召喚したのだ。
男は自らを神に挑むモノと名乗り、禁じられた“魔"を発動しギルドから永久追放された身で、目的の為なら手段を選ばない卑劣漢である。
三人の中の一人、最年長と思われる男の子が怯えた眼を男に向け有りっ丈の勇気を振絞って叫ぶ。
しかし、その勇気も空しく、彼は歩みを止めない。
「扉を開く時成り」
男は何らかの呪法を唱え結界を構成し、地面に魔法陣を浮かび上がらせる。
小さな女の子と男の子、そして先程の男の子は鍵へとその変貌を行う。
男は右手を切り落とし呪法を詠唱すると、魔法陣が光輝き眼の前に扉が発生する。
それは金色に染まった血の滝であり神を知る唯一の術である。
「我が右手を代償に、そして三つの鍵よ、血金の扉を開け。」
滝が轟音と共に真っ二つに割れる、そして漆黒の球体が現われ男を飲み込む。
だが、村人の行った召喚がそれを阻む。
金色の滝が、別の何か、とても言葉では表せない色に変色し、事象の彼方より男が現れる。
誰が知ろう、彼のモノは史上初の魔皇、史上最大の魔の探求者、神への道を誰にも蔑まれる訳も無く歩む王道。
「貴様にその神秘の扉を開く権利は無い、それは貴様如きが触れて良いモノではない」
男は書を掲げ、詠唱をする、それは、最終戦争の魔道書、最大級の禁忌。
その刹那、世界は裏返り愚者を還元した。

一年前に書いたヤツの改訂版、つーか、全部書き直すぜ
一年四ヶ月ぶりにLerwin ルートA 現在篇を書くのか・・・

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秘

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