輝ける其の刻に…(廃棄Ver)
2005年5月7日 思想 人は皆、秘密を持っているのだと言う。例えば「好きな人」、「集めているモノ」、「夢」と言ったようなモノである。けれども、それは異端的なことであって、誰にも受け入れられないことだってある。世の中は不条理だ、と思うともあるだろう。
それが世界(げんじつ)ってもんだろ。
第一章 淡い感情、それは魔法なり
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俺、こと天野(あまの) 昇(すすむ)は非現実的な日常(ファンタジー)の住人である。職業・学生兼「魔術師」、こんな特異な男子高校生はそうそう居るものではない。下手したら自分ですら魔術を使えることに対して疑いを持っているのだから。
初めて魔術を発動させたのは忘れもしない中学二年の秋の修学旅行二日目であった。
俺は一人、歩いていた。皆が迷子になってしまったからだ。客観的にとらえると自分が迷子になったのであるが。しかし、それは男のプライド、いや、それ以前に中学生としてのプライドが許さなかったのだ。だが、探しても、探しても、皆は見当たらない。途方に暮れて近くのベンチに腰掛けた時にそれは起動した。後々分かったことだが、それは初級の探査魔術、無くした物を探すために形成された魔術(プログラム)だったらしい。けれども、俺はそんなこと知らなかった。世界が裏返ったかのように、地形がワイヤーフレーム化して見えた。そして目標を捕捉、皆は薄い黄色に光っていたのだった。驚いた、腰を抜かすほどに驚いた。そして、眼を疑った、俺の眼はどうなったのだろう、と恐怖さえもした。けれども、そんな気持ちは直ぐに吹き飛んだ。脳裏に自分の身体の構成が浮かび上がったからだ。初めからこうなるべきしてこうなったのだ。そう思えたからこそ平常を取り戻せたのだ。
今考えると、それは少し、怖いことなのかも知れない。自分にない機能を明白化され、落ち着きを取り戻すなんてどういう神経をしているのだ、と。
脳内に不思議と思い浮かぶ情報によれば、魔術とは本来、人の世界に存在しない概念を別の所より発生させることらしい。よって、魔術とはあって無いモノなのだ。ならば、なぜその様な力が使えるか?
それは架空の力(まりょく)を定義し、仮想神経(エミュレーター)を体内に埋め込むからだ。だが、それだけでは魔術は具現化されない。仮想神経に命令信号を送らなければ成らないからだ。どうもこの命令信号と言うモノには特性があり、魔術師の血筋によってその作用が変わるモノであるらしい。
考えれば、考えるほどに分からない。魔術とは結局何なのだろうか。最大の疑問がここで浮上する。魔術発動には仮想神経と呼ばれるモノが必要らしい。ならば俺はいつ、それを埋め込まれたのだ?俺の両親は普通に人間をやっている。手から炎を出さないし、箒に乗ってスーパーに買い物にも行かない。それどころか、多国籍の人間の血すら混じっていない生粋の日本人なのだ。
しいて一つ、仮説を唱えるならば、それは自分が「魔術師」ではないと言うことだ。それは、「魔法使い」と呼ばれる存在だ。本来、人間に魔法を使うモノは発生しない。魔法は強力すぎる力なのだ。命令信号なんて要らない、ただ、思うだけで世界を変革させる可能性を秘めているのだ。そう、言葉通り、魔の「法」なのである。本来、魔法とは神や悪魔と呼ばれる高次元な存在が扱う力なのだ。人間の器ではそそぎきれないほどの魔力を持ってくることになる。よって、具現化の途中段階までならば近づけることは可能かもしれない、が、途中で肉体が砕け散ることは間違いない。しかし、魔法を使う方法が無いわけではない。「悪魔」との契約である。「魂」と言う未知のエネルギーを捧げるだけで簡単に力を手に入れることができる。が、諸刃の剣、魂を捧げた人間はもう心も存在せず、ただの肉塊となるのだ。よって、魔法使いは発生しない。悪魔は気まぐれで、よく、子供の前に姿を現すと言う、俺はそれにそそのかされたのかもしれない。
しかし、それも否定しなければならない。俺は「悪魔」なんてものに出会ったことがない。ならば、俺の起源はどこから来ているのだろうか。
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「やばいな」
壁掛け時計を見ながら俺は呟いた。時計の長い針は三を指している。それが六の位置に来る前に俺は学校にたどりつかなければならないのだ。
「リミットは十五分、本気で走っていけばギリギリ間に合うか」
深いため息をつき、俺は扉を開いて直ぐさに走る体制をとる。
エレベーターが上ってくるのを待つ時間なんてない、一分一秒を競う状態なのだ。意を決し、階段を降りる。マンション十三階は、確かに景色は良いがこういった時に不便だ。
「魔術って不便だよなぁ、空も飛べんとは・・・・・。」
魔術行使による飛行は途方に暮れるほどの年月を重ね習得するモノであり、パッと出の若輩にそう簡単に使えるモノではない。
「前にやった時は悲惨だったよな。」
ボソリ、と言い苦笑する。確か、空を蹴って飛び立とうとした瞬間に壁に激突したのだ。それは大変無様で、記憶から消したい思いで一杯である。
「あ〜、ヘヴンでガムでも買って行きたいな。」
HEAVEN(ヘヴン) ELEVEN(イレヴン)、通称ヘヴイレ、俗に言うコンビニってヤツだ。昇はガム愛好家であり、それは禁断症状への扉が開きかけているぐらいだ。まぁ、本筋には関係の無いことではあるが。雑念を振りほどき、早急に通り過ぎていくことにした。
「おうし、ギリギリ間に合うな。」
視覚する限り門は開いている、鐘もまだ鳴ってはいない。が、油断は禁物、敷地内に入れたとしても、時間内に教室へ入らなければBadEndだ。
「つ、疲れる。」
息を上げ、恐ろしいほどに長い階段を駆け上る。高等部一学年の教室は五階に位置すると言うかなり緊迫した状態である。
「おっは、よ〜〜〜」
背中がガツン、とする。不意打ち中の不意打ち。驚き俺はその場で崩れ去る。
「大げさな、どったのよ、すすむ〜〜。」
振り返るとそこには体育会系バリバリの少女が立っていた。が、しかし、あえてそれを無視し、先を急ぐ。教室まで後少しなのである。
「ちょっと、つれないわよ。」
俺が走っていくと、彼女は焦ったように追いかけてきた。そして、俺は教室に滑り込んだ。
「ふう、あぶねぇ、あぶねぇ、ギリギリじゃないか。」
教室に入ったとたんに鐘が鳴った。席に着くまで余裕に時間がある。
「あんたねぇ、朝っぱら無視とはどう言うことよ。」
先ほどの女が俺の前の席に座り話しかけてきた。
「ん、そりゃあ、お前に付き合っていたら遅刻しそうだったからな。」
彼女はむぅ、と唸った。
「話なら後で聞いてやっから、今は前を向け、SHRが始まる。」
しっし、と言わんばかりに俺は彼女に促した。それに対し珍しく、あっさりと前を向いた。彼女の名は土門(どもん) 美紀(みき)、何か男っぽい、と苗字を嫌いクラスメイトには名前で呼ばすようにしている。見た目はまぁ、客観的に見ればA+と言ったところか、健康そうで発育した身体、今時珍しいポニーテール。が、ハードは良くてもソフトウェアが凶暴で、俺なんかとばっちり受けまくりなのである。一言で言えば迷惑なのだが、俺が楽しいヤツだ、と認識してしまったので余計に性質が悪い。
「起立、礼。」
いつの間にかSHRは終ってしまったようだ。1時限目は五分後の八時四十五分からだ。それにあわせるように、美紀が話しかけてきた。
「ねぇ、昇、今日さ。暇かな。」
改めたかのように話してくる。何か深刻な話なのだろうか。
「別に予定は無いが、何か用か。」
「たいしたことじゃないんだけど・・・・・。」
と黙り込んでしまった。
「う〜ん。」
唸った後、彼女は自らの頬を両手で叩いた。何かを決心したようだ。
それが世界(げんじつ)ってもんだろ。
第一章 淡い感情、それは魔法なり
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俺、こと天野(あまの) 昇(すすむ)は非現実的な日常(ファンタジー)の住人である。職業・学生兼「魔術師」、こんな特異な男子高校生はそうそう居るものではない。下手したら自分ですら魔術を使えることに対して疑いを持っているのだから。
初めて魔術を発動させたのは忘れもしない中学二年の秋の修学旅行二日目であった。
俺は一人、歩いていた。皆が迷子になってしまったからだ。客観的にとらえると自分が迷子になったのであるが。しかし、それは男のプライド、いや、それ以前に中学生としてのプライドが許さなかったのだ。だが、探しても、探しても、皆は見当たらない。途方に暮れて近くのベンチに腰掛けた時にそれは起動した。後々分かったことだが、それは初級の探査魔術、無くした物を探すために形成された魔術(プログラム)だったらしい。けれども、俺はそんなこと知らなかった。世界が裏返ったかのように、地形がワイヤーフレーム化して見えた。そして目標を捕捉、皆は薄い黄色に光っていたのだった。驚いた、腰を抜かすほどに驚いた。そして、眼を疑った、俺の眼はどうなったのだろう、と恐怖さえもした。けれども、そんな気持ちは直ぐに吹き飛んだ。脳裏に自分の身体の構成が浮かび上がったからだ。初めからこうなるべきしてこうなったのだ。そう思えたからこそ平常を取り戻せたのだ。
今考えると、それは少し、怖いことなのかも知れない。自分にない機能を明白化され、落ち着きを取り戻すなんてどういう神経をしているのだ、と。
脳内に不思議と思い浮かぶ情報によれば、魔術とは本来、人の世界に存在しない概念を別の所より発生させることらしい。よって、魔術とはあって無いモノなのだ。ならば、なぜその様な力が使えるか?
それは架空の力(まりょく)を定義し、仮想神経(エミュレーター)を体内に埋め込むからだ。だが、それだけでは魔術は具現化されない。仮想神経に命令信号を送らなければ成らないからだ。どうもこの命令信号と言うモノには特性があり、魔術師の血筋によってその作用が変わるモノであるらしい。
考えれば、考えるほどに分からない。魔術とは結局何なのだろうか。最大の疑問がここで浮上する。魔術発動には仮想神経と呼ばれるモノが必要らしい。ならば俺はいつ、それを埋め込まれたのだ?俺の両親は普通に人間をやっている。手から炎を出さないし、箒に乗ってスーパーに買い物にも行かない。それどころか、多国籍の人間の血すら混じっていない生粋の日本人なのだ。
しいて一つ、仮説を唱えるならば、それは自分が「魔術師」ではないと言うことだ。それは、「魔法使い」と呼ばれる存在だ。本来、人間に魔法を使うモノは発生しない。魔法は強力すぎる力なのだ。命令信号なんて要らない、ただ、思うだけで世界を変革させる可能性を秘めているのだ。そう、言葉通り、魔の「法」なのである。本来、魔法とは神や悪魔と呼ばれる高次元な存在が扱う力なのだ。人間の器ではそそぎきれないほどの魔力を持ってくることになる。よって、具現化の途中段階までならば近づけることは可能かもしれない、が、途中で肉体が砕け散ることは間違いない。しかし、魔法を使う方法が無いわけではない。「悪魔」との契約である。「魂」と言う未知のエネルギーを捧げるだけで簡単に力を手に入れることができる。が、諸刃の剣、魂を捧げた人間はもう心も存在せず、ただの肉塊となるのだ。よって、魔法使いは発生しない。悪魔は気まぐれで、よく、子供の前に姿を現すと言う、俺はそれにそそのかされたのかもしれない。
しかし、それも否定しなければならない。俺は「悪魔」なんてものに出会ったことがない。ならば、俺の起源はどこから来ているのだろうか。
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「やばいな」
壁掛け時計を見ながら俺は呟いた。時計の長い針は三を指している。それが六の位置に来る前に俺は学校にたどりつかなければならないのだ。
「リミットは十五分、本気で走っていけばギリギリ間に合うか」
深いため息をつき、俺は扉を開いて直ぐさに走る体制をとる。
エレベーターが上ってくるのを待つ時間なんてない、一分一秒を競う状態なのだ。意を決し、階段を降りる。マンション十三階は、確かに景色は良いがこういった時に不便だ。
「魔術って不便だよなぁ、空も飛べんとは・・・・・。」
魔術行使による飛行は途方に暮れるほどの年月を重ね習得するモノであり、パッと出の若輩にそう簡単に使えるモノではない。
「前にやった時は悲惨だったよな。」
ボソリ、と言い苦笑する。確か、空を蹴って飛び立とうとした瞬間に壁に激突したのだ。それは大変無様で、記憶から消したい思いで一杯である。
「あ〜、ヘヴンでガムでも買って行きたいな。」
HEAVEN(ヘヴン) ELEVEN(イレヴン)、通称ヘヴイレ、俗に言うコンビニってヤツだ。昇はガム愛好家であり、それは禁断症状への扉が開きかけているぐらいだ。まぁ、本筋には関係の無いことではあるが。雑念を振りほどき、早急に通り過ぎていくことにした。
「おうし、ギリギリ間に合うな。」
視覚する限り門は開いている、鐘もまだ鳴ってはいない。が、油断は禁物、敷地内に入れたとしても、時間内に教室へ入らなければBadEndだ。
「つ、疲れる。」
息を上げ、恐ろしいほどに長い階段を駆け上る。高等部一学年の教室は五階に位置すると言うかなり緊迫した状態である。
「おっは、よ〜〜〜」
背中がガツン、とする。不意打ち中の不意打ち。驚き俺はその場で崩れ去る。
「大げさな、どったのよ、すすむ〜〜。」
振り返るとそこには体育会系バリバリの少女が立っていた。が、しかし、あえてそれを無視し、先を急ぐ。教室まで後少しなのである。
「ちょっと、つれないわよ。」
俺が走っていくと、彼女は焦ったように追いかけてきた。そして、俺は教室に滑り込んだ。
「ふう、あぶねぇ、あぶねぇ、ギリギリじゃないか。」
教室に入ったとたんに鐘が鳴った。席に着くまで余裕に時間がある。
「あんたねぇ、朝っぱら無視とはどう言うことよ。」
先ほどの女が俺の前の席に座り話しかけてきた。
「ん、そりゃあ、お前に付き合っていたら遅刻しそうだったからな。」
彼女はむぅ、と唸った。
「話なら後で聞いてやっから、今は前を向け、SHRが始まる。」
しっし、と言わんばかりに俺は彼女に促した。それに対し珍しく、あっさりと前を向いた。彼女の名は土門(どもん) 美紀(みき)、何か男っぽい、と苗字を嫌いクラスメイトには名前で呼ばすようにしている。見た目はまぁ、客観的に見ればA+と言ったところか、健康そうで発育した身体、今時珍しいポニーテール。が、ハードは良くてもソフトウェアが凶暴で、俺なんかとばっちり受けまくりなのである。一言で言えば迷惑なのだが、俺が楽しいヤツだ、と認識してしまったので余計に性質が悪い。
「起立、礼。」
いつの間にかSHRは終ってしまったようだ。1時限目は五分後の八時四十五分からだ。それにあわせるように、美紀が話しかけてきた。
「ねぇ、昇、今日さ。暇かな。」
改めたかのように話してくる。何か深刻な話なのだろうか。
「別に予定は無いが、何か用か。」
「たいしたことじゃないんだけど・・・・・。」
と黙り込んでしまった。
「う〜ん。」
唸った後、彼女は自らの頬を両手で叩いた。何かを決心したようだ。
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