歪んだ世界 file.1 no.1
2005年3月1日 思想 ―――今、この時は始まりで終わり。
錆び付いた時計の針のように、運命は時を刻んでいく。刻まれる針の根元からは、いつも悲鳴が聞こえる。
始まりとして受け取るか、終わりとして受け取るかはあなた次第。
いつからその時計はあるのだろう。いつからその時計は時を刻んでいるのだろう。
あなたが生きるのなら、全てをあなたが決めなければならない。
―――時計は、時を刻むものだから。
1.
世界は二つの顔を持っている。
科学が全てを支配する現実、魔が全てを制する現実、合間見える事の無く同じ処に存在する世界。
例えるならば水と油、決して混ざる事の無いモノ。
ちなみに俺、こと赤城 潤轍(AKAGI JUNTETSU)は有り得るはずの無い中間に属するモノである。
父に科学者を持ち、母に魔術師を持つ、我ながらかなり異端っぷりだと思う。
二人も結婚するまで其の存在に気付かなかったと言う恐ろしい程の天然だ。
故に二つの特性を持つどっち付かずの中途半端な存在、どちらかと言うと魔のサイドに属している。
近代的な武器と魔術と行使するが故に未だに魔導士である。
そうでなくても肩身が狭いのに此れ以上落魄れる理由も無い。
昔、俺の様な異端者が居たらしいが、其の人はどんどん上に上り詰めたらしい。
こりゃあ、才能の違いだと俺は思うんだ。
二つの特性を持つと言う事は両方の力を半分ずつ受け継ぐと言う事。
つまり、とっても中途半端って事だ。
近代兵器と魔法の融合、其れを実現できたならば最強の力と成す。
しかし、是が出来ないが故に落ちこぼれ、悲しいかな魔道士。
これっぽちの才能も無く、雀の涙程の魔力(ちから)で是からを生きていくとなるとかなり難しい。
父の後を継ぎ科学者に成れば良いのだろうが、是もまた才能が無く難しい。
世界を読み取る事の出来ない俺には世界は途方にも無く大きすぎるのである・・・・・。
ドガッッ
鈍い音がする、棒の様な硬い物質が背骨に直撃した音だ。
其の場で俺は悶絶し、意識が飛びそうになった時に声を掛けられた。
「貴様!訓練の最中に何を考えている!?其の詰めの甘さが命取りとなるぞ!!」
女性(おんな)の声だった、嫌でも忘れない程に脳に刻み込まれた聞き覚えのある声だ。
「何時までも魔道士をやっているつもりか?精神を鍛える事は肉体も鍛えなければならない、其れは魔力強化へと繋がる事だ。」
とても怒っている様だ、思考が停止しかけている頭でも理解できた。
「貴様はこのまま負け犬として過ごす気か?貴様が良いならば良かろう、之だから混血(ハーフ)は・・・・・。」
魂が沸き上がった、怒りと呼ばれる感情が起動する。
「はぁ・・・・・ふで・・・あることは・・・関係、無い・・・・・です。」
鋭い痛みが背からする、とてつもなく痛い、しかし両足で立ち上がる。
「立ち上がるか、赤城、御前は何時まで魔道士をやっているつもりか?」
其の言葉は心にグサっときた、辛く、痛々しい言葉だった。
俺だって別に好きで落ちこぼれているんじゃない、そう好きでやっている訳じゃない。
「このFUCKで腐れ野郎が!貴様、其れでも男か?其の股に付いている棒は(以下略)」
さっきの何て比に成らないほどに腹の底から怒りが沸き上がった。
「俺は、男です・・・・・。」
其の反応にムッ、としたのか女性は直ぐさに言い放った。
「其れが教官に対する口の聞き方か!?この蛆虫め!!」
またしても痛烈なお言葉、胃にオゾンホールが開きそうになった。
頭がくらくらとする、鬼のような形相で睨まれ、罵倒され、高が女一匹に・・・・・。
しかし、自分には其の女性を越えるだけの力を持ち合わせていない。
勝てない事は百も承知、ならば奇襲を賭けるか、と言う結論に達する。
咄嗟に眼を見開き手元の棒を持ち振り翳す。
しかし、まったく手応えが無い。
次の瞬間、世界が消えた。
2.
次に眼を開いたのは翌日の朝であった。
昨日俺は凶暴な、もとい腕の立つ御姉様から強烈な一撃を喰らって精神を何処かに吹き飛ばされてしまったのである。
首筋が痛いが、自業自得である故、文句の一つも言う事が出来ない。
自分のベッドの中で自虐的に溜息をついた。
何時の間にかパジャマに成っているが、今は気にする事は無いだろう。
また深い所に降りたい、と思ったが時間的にも余裕が無い故に外に出る。
外は冬である、当然布団から出ると寒気が一気に来る。
毛布が恋しく成りそうな寒さである。
鼻がむずむずするが、生憎ベッドの上のティッシュの箱の中にはもう紙が一枚も残っていない。
我ながらついていないな、と思った。
着替えた方が幾らかは暖かいだろう、と思いクローゼットに歩み寄る。
中には今風の若者が着る様な服が沢山掛けてあり、奥の方に申し訳なさそうなくらい縮こまって学ランが掛けてあった。
ワイシャツの袖に腕を通す、直ぐ様着なければ冷気で身体が震えるだろう。
冷たい、そう思った。
冷蔵庫の様なクローゼットの中で熟成させていた服はとてもじゃないが着れたものではない。
コタツが有れば其の中に突っ込んでおけるのだが、自分の部屋にはその様な便利なモノを置いてはいなかった。
今度購入してやろうか、と思ったが現在の自分の財布の中は外の気温以上に寒く、氷河期に突入しようとしていた故に断念せざるおえなかった。
ドアノブも冷え切っており、手が悴みそうであったが静電気が来なかっただけでも運が良いだろう、そう勝手に自分で納得する。
己以外の気配は無く、寒々しい、孤独を思わし廊下は静まりかえっている。
ダイニングには誰も居なかった、ただテーブルの上に何時も通りに朝食が並べられているだけである。
其れを零さない様に電子レンジへと入れて暖めるだけの食事。
無機質過ぎる様に時は流れ往き現実を認識する。
昔、夢見ていた。
両親、そして自分が揃って食事をする事を。
しかし、其れは遠すぎる幻想、片方と会うにも相当な苦労をしなければならない。
両親をセットで見たのはもう彼是数年前であろう。
俺の誕生日、魔術師として認識する洗礼の日。
科学を父に持ち、魔術を母に持った日。
其の日は興奮して夜も眠る事が出来なかったのは言うまでもない。
鍵っ子であった自分がTVで観たアノ魔法を使える、のである。
だが、しかし其れは淡い幻想に過ぎなかった。
魔法は恐ろしい程に高位なる存在にのみ許された禁域。
魔導行使すらまともに出来ない第五世代、其れも混血成りしモノには到底身に余るモノ。
無駄な事を考えている内に食事が温まった様である。
―――――走り抜ける。
見慣れた風景が飛んで行く様に流れている。
自主トレーニングを兼ねた自宅から学校への登校風景である。
学生服で、其れも高校生タイを塗り替えそうな勢いで駆け抜ける俺は宛ら珍妙に見得るであろう。
しかし、観客は一人も居ない。
寒々とした田舎道を行き交う阿呆は如何も俺以外には居ないらしい。
土埃が舞い黒い学ランに散る事も気にせずに突き抜ける。
魔術も科学も基礎が成っていないと己が身を滅ぼす諸刃の剣。
故に身体を強化しなければお話にも成らないのである。
序文、多分ヴァル殿の作ったヤツ?俺シラネ(渡された
一部用語はフェイ殿作成
錆び付いた時計の針のように、運命は時を刻んでいく。刻まれる針の根元からは、いつも悲鳴が聞こえる。
始まりとして受け取るか、終わりとして受け取るかはあなた次第。
いつからその時計はあるのだろう。いつからその時計は時を刻んでいるのだろう。
あなたが生きるのなら、全てをあなたが決めなければならない。
―――時計は、時を刻むものだから。
1.
世界は二つの顔を持っている。
科学が全てを支配する現実、魔が全てを制する現実、合間見える事の無く同じ処に存在する世界。
例えるならば水と油、決して混ざる事の無いモノ。
ちなみに俺、こと赤城 潤轍(AKAGI JUNTETSU)は有り得るはずの無い中間に属するモノである。
父に科学者を持ち、母に魔術師を持つ、我ながらかなり異端っぷりだと思う。
二人も結婚するまで其の存在に気付かなかったと言う恐ろしい程の天然だ。
故に二つの特性を持つどっち付かずの中途半端な存在、どちらかと言うと魔のサイドに属している。
近代的な武器と魔術と行使するが故に未だに魔導士である。
そうでなくても肩身が狭いのに此れ以上落魄れる理由も無い。
昔、俺の様な異端者が居たらしいが、其の人はどんどん上に上り詰めたらしい。
こりゃあ、才能の違いだと俺は思うんだ。
二つの特性を持つと言う事は両方の力を半分ずつ受け継ぐと言う事。
つまり、とっても中途半端って事だ。
近代兵器と魔法の融合、其れを実現できたならば最強の力と成す。
しかし、是が出来ないが故に落ちこぼれ、悲しいかな魔道士。
これっぽちの才能も無く、雀の涙程の魔力(ちから)で是からを生きていくとなるとかなり難しい。
父の後を継ぎ科学者に成れば良いのだろうが、是もまた才能が無く難しい。
世界を読み取る事の出来ない俺には世界は途方にも無く大きすぎるのである・・・・・。
ドガッッ
鈍い音がする、棒の様な硬い物質が背骨に直撃した音だ。
其の場で俺は悶絶し、意識が飛びそうになった時に声を掛けられた。
「貴様!訓練の最中に何を考えている!?其の詰めの甘さが命取りとなるぞ!!」
女性(おんな)の声だった、嫌でも忘れない程に脳に刻み込まれた聞き覚えのある声だ。
「何時までも魔道士をやっているつもりか?精神を鍛える事は肉体も鍛えなければならない、其れは魔力強化へと繋がる事だ。」
とても怒っている様だ、思考が停止しかけている頭でも理解できた。
「貴様はこのまま負け犬として過ごす気か?貴様が良いならば良かろう、之だから混血(ハーフ)は・・・・・。」
魂が沸き上がった、怒りと呼ばれる感情が起動する。
「はぁ・・・・・ふで・・・あることは・・・関係、無い・・・・・です。」
鋭い痛みが背からする、とてつもなく痛い、しかし両足で立ち上がる。
「立ち上がるか、赤城、御前は何時まで魔道士をやっているつもりか?」
其の言葉は心にグサっときた、辛く、痛々しい言葉だった。
俺だって別に好きで落ちこぼれているんじゃない、そう好きでやっている訳じゃない。
「このFUCKで腐れ野郎が!貴様、其れでも男か?其の股に付いている棒は(以下略)」
さっきの何て比に成らないほどに腹の底から怒りが沸き上がった。
「俺は、男です・・・・・。」
其の反応にムッ、としたのか女性は直ぐさに言い放った。
「其れが教官に対する口の聞き方か!?この蛆虫め!!」
またしても痛烈なお言葉、胃にオゾンホールが開きそうになった。
頭がくらくらとする、鬼のような形相で睨まれ、罵倒され、高が女一匹に・・・・・。
しかし、自分には其の女性を越えるだけの力を持ち合わせていない。
勝てない事は百も承知、ならば奇襲を賭けるか、と言う結論に達する。
咄嗟に眼を見開き手元の棒を持ち振り翳す。
しかし、まったく手応えが無い。
次の瞬間、世界が消えた。
2.
次に眼を開いたのは翌日の朝であった。
昨日俺は凶暴な、もとい腕の立つ御姉様から強烈な一撃を喰らって精神を何処かに吹き飛ばされてしまったのである。
首筋が痛いが、自業自得である故、文句の一つも言う事が出来ない。
自分のベッドの中で自虐的に溜息をついた。
何時の間にかパジャマに成っているが、今は気にする事は無いだろう。
また深い所に降りたい、と思ったが時間的にも余裕が無い故に外に出る。
外は冬である、当然布団から出ると寒気が一気に来る。
毛布が恋しく成りそうな寒さである。
鼻がむずむずするが、生憎ベッドの上のティッシュの箱の中にはもう紙が一枚も残っていない。
我ながらついていないな、と思った。
着替えた方が幾らかは暖かいだろう、と思いクローゼットに歩み寄る。
中には今風の若者が着る様な服が沢山掛けてあり、奥の方に申し訳なさそうなくらい縮こまって学ランが掛けてあった。
ワイシャツの袖に腕を通す、直ぐ様着なければ冷気で身体が震えるだろう。
冷たい、そう思った。
冷蔵庫の様なクローゼットの中で熟成させていた服はとてもじゃないが着れたものではない。
コタツが有れば其の中に突っ込んでおけるのだが、自分の部屋にはその様な便利なモノを置いてはいなかった。
今度購入してやろうか、と思ったが現在の自分の財布の中は外の気温以上に寒く、氷河期に突入しようとしていた故に断念せざるおえなかった。
ドアノブも冷え切っており、手が悴みそうであったが静電気が来なかっただけでも運が良いだろう、そう勝手に自分で納得する。
己以外の気配は無く、寒々しい、孤独を思わし廊下は静まりかえっている。
ダイニングには誰も居なかった、ただテーブルの上に何時も通りに朝食が並べられているだけである。
其れを零さない様に電子レンジへと入れて暖めるだけの食事。
無機質過ぎる様に時は流れ往き現実を認識する。
昔、夢見ていた。
両親、そして自分が揃って食事をする事を。
しかし、其れは遠すぎる幻想、片方と会うにも相当な苦労をしなければならない。
両親をセットで見たのはもう彼是数年前であろう。
俺の誕生日、魔術師として認識する洗礼の日。
科学を父に持ち、魔術を母に持った日。
其の日は興奮して夜も眠る事が出来なかったのは言うまでもない。
鍵っ子であった自分がTVで観たアノ魔法を使える、のである。
だが、しかし其れは淡い幻想に過ぎなかった。
魔法は恐ろしい程に高位なる存在にのみ許された禁域。
魔導行使すらまともに出来ない第五世代、其れも混血成りしモノには到底身に余るモノ。
無駄な事を考えている内に食事が温まった様である。
―――――走り抜ける。
見慣れた風景が飛んで行く様に流れている。
自主トレーニングを兼ねた自宅から学校への登校風景である。
学生服で、其れも高校生タイを塗り替えそうな勢いで駆け抜ける俺は宛ら珍妙に見得るであろう。
しかし、観客は一人も居ない。
寒々とした田舎道を行き交う阿呆は如何も俺以外には居ないらしい。
土埃が舞い黒い学ランに散る事も気にせずに突き抜ける。
魔術も科学も基礎が成っていないと己が身を滅ぼす諸刃の剣。
故に身体を強化しなければお話にも成らないのである。
序文、多分ヴァル殿の作ったヤツ?俺シラネ(渡された
一部用語はフェイ殿作成
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